蕎麦とラーメン食べ歩き と読書のブログ

蕎麦とラーメンの食べ歩きと読書のブログです。蕎麦は、結構詳しいので、蕎麦の評価は信用出来ると思います。ラーメンは、素人です。読書傾向は偏りがちです。読書系の記事以外は酔っ払いながら書いてますので、失礼がありましたら、すみません。

カテゴリ:読書関係 > 伊東潤

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王になろうとした男

伊東 潤の「王になろうとした男」です。2016年に文藝春秋で文庫が出てますが、2025年1月8日に発売された今回の作品は、朝日新聞出版からで、ボーナストラック短編「覇王の血」が初収録されております。6編あるのですが、テーマは「野心とは何か」との事で、主人公の心の内に迫っておりまして、どの作品も面白かったです。

信長の家臣となったゆえに、運命に翻弄される6人を描く歴史連作短編集

毛利新助、塙直政、荒木村重、津田信澄、彌助。野心や野望があるがゆえに、運命に翻弄された信長の家臣たちを描く短編集。朝日文庫版に際し、不遇の幼少期を過ごし、美濃の有力国人・遠山氏に養子にやられた信長の五男、源三郎の復讐を描く「覇王の血」を新たに収録。


「果報者の槍」・・・桶狭間で今川義元の首を取るという大功を挙げた「毛利新助」が主人の物語です。この桶狭間での論功行賞で、毛利新助は、今川方の状況を的確に掴んできた梁田出羽守政綱に次ぐ栄誉に輝いたんですね。そして、馬廻衆の中から精鋭だけで編成された信長の親衛隊の「黒母衣衆」に抜擢されるのですが、それからの出世は無いんです。再び歴史上に現れるのは、本能寺の変で壮絶な討ち死にを遂げるとこなのですが、この間の空白の時を伊東潤は、見事に描いております。僕的には、この作品が一番良かったです。

「毒を食らわば」・・・信長の馬廻衆として仕え、山城及び大和の守護にまで出世した「塙直政」が主人公の物語です。気難しい信長を相手に、いかに出世していったかが描かれていて面白かったです。これは、現代の出世競争に置き換えてみても想像できると思いますが、めちゃ大変な事だったはずなんですね。ライバルは、羽柴秀吉、明智光秀など沢山の強者がライバルな訳で、その出世レースで、一時はトップに躍り出る程、出世を果たした塙直政の物語は歴史好きでなくても楽しめます。この作品で一番印象に残った場面です。
「これは、朝倉義景、浅井久政、浅井長政の薄濃だ」
薄濃(はくだみ)とは、酒器や壺を漆で塗り固め、金銀箔で彩色したもののことだ。
信長は、三人の頭蓋骨を黄金の薄濃で覆っていた。
三人の小姓が頭蓋骨の頭頂部分を取り外し、それを逆さに捧げ持つと、注ぎ口の長い銚子を持って現れた別の小姓が、次々と清酒を注いでいく。
ーーまさか、飲むのか。いや、われらに飲ませるのか。
薄濃の一つを渡された信長は、いかにもうまそうに、その中の酒を飲み干した。
室内には重苦しい空気が漂っていた。皆、突き上げてくる悪寒を抑えているのだ。
「わしが、こうして三人の薄濃で酒を飲むのは、この三人が憎いからではない。そなたらに伝えたい事があるからだ」
信長は平然と続けた。
「見ての通リ、人は死んでしまえば何もできぬ。あれだけわしを苦しめた三人も、死んでしまえば、こうして盃になるほか、何の役にも立たぬ」
そこまで言ったところで、信長の顔が引き締まった。
「それゆえそなたらも、己の才や力を出し惜しみせず、生きておるうちに底の底まで使い尽くせ」
「はっ」
大げさな声を上げつつ、秀吉が真っ先に額を畳に擦り付けると、やや遅れて、残る者たちがそれに倣った。
「何事も、人に負けてよしとしてはならぬ。『これくらいで、わしはよい』と思った者は、そこで終わりなのだ」
並み居る家臣たちも、信長の真意が分かってきた。
ーーわれらに出頭競争を強いておるのだ。
「そなたらの上に立つのは、わしだけだ。ほかの誰かの下風に立ってもよいと思う者は申し出よ。かような者は織田家に要らぬ。命までは取らぬゆえ、さっさとこの場から去れ」
むろん名乗り出る者はいない。
家臣たちを見回し、信長は満足げにうなずくと語気を強めた。
「わが家中では、作物がすべてだ。それを得るために、そなたらがどのような手を使おうと、わしはとやかく言わぬ。それゆえ、いかなる手を使っても敵を倒し、味方を出し抜け。それが織田家なのだ」
「はっ」と言いつつ、全員が競うように平伏した。
畳の冷たさを額に感じつつ、直政は覚悟を決めた。
ーーどうせ食らわねばならぬ毒なら、わしは皿まで食らってやる。

「何事も、人に負けてよしとしてはならぬ。『これくらいで、わしはよい』と思った者は、そこで終わりなのだ」
この言葉は良いですね。2番目に面白かったです。

「復讐鬼」・・・信長から「摂津一職支配権」を認められ、三十五万石の主となった「荒木村重」が主人公の物語です。突如、信長に対して反旗を翻したのですが、信長の信頼が厚かった荒木村重の謀反は謎に包まれてまして、諸説ありますが、この作品では「中川清秀」の謀略説で話が進みます。なかなか面白かったです。

「小才子(こざいし)」・・・織田氏の連枝衆の「津田信澄」が主人公の物語です。連枝衆の序列は第5位で、信長の嫡子である信忠、信雄、信長の弟の信包、信長の庶子の信孝に次ぐ立場です。しかし、信澄の父は、謀反の企てを起こして敗北して、信長に暗殺されているんです。(信澄にとって信長は伯父にあたる)この複雑な関係の中で、この作品では、信澄はいつか信長を殺すと心に決めて生きている設定です。その為、チャンスが訪れるまでは、信長に最も従順な家臣の一人を懸命に演じてきたんですね。そして、そのチャンスが訪れて・・・。という感じの物語です。「小才子(こざいし)」とは、頭の回転は速いものの大局観がなく、場当たり的に動き回る者の事です。信澄は「小才子」だったんですね。

「王になろうとした男」・・・イエズス会のイタリア人巡察師が、織田信長へ進呈した黒人男性の「彌介」が主人公の物語です。「信長公記」天正九年二月二十三日条に、太田牛一はこう記してます。
「キリシタン国から黒坊主が参上した。年のころは二十六、七歳でもあろうか。全身の黒いことは牛のようだ。見るからにたくましく、見事な体格をしている。その上、力の強さは十人力以上はある」

信長に気に入られて、扶持なども与えられていたそうです。この「彌介」が、本能寺の変の際には、信忠の元に駆け付けて、共に戦ったとの事です。これを題材として、伊東潤はドラマチックな作品に仕上げております。なかなか面白かったです。

「覇王の血」・・・上記の作品紹介にもあります様に、不遇の幼少期を過ごし、美濃の有力国人・遠山氏に養子にやられた信長の五男、織田源三郎勝長の復讐を描いた作品です。ストーリー展開が、歴史好きの僕の心をくすぐる展開で楽しめました。ほんとよく考えれた作品だと思います。本能寺の変の際には「信忠」と共に、明智光秀の軍勢に攻められて討ち死にしたのですが、復讐を果たしつつ、明智光秀にも一杯食わす結末に感動しました。


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琉球警察

伊東潤の「琉球警察」です。伊東潤のメルマガで、こちらの作品の紹介をしていたのですが、そのプレゼンが素晴らしくて、読んでみたくなったんですね。(伊東潤は、営業マンとしても優秀だと思います)福井出張の際に、旅のお供に持って行ったのですが、面白くて一気に読めてしまいました。戦後の沖縄の事を知る事が出来、更に、徳之島出身の公安警察官/東貞吉の物語としても楽しめました。帯は完璧ですね。

奄美諸島徳之島出身の東貞吉は、琉球警察名護警察署配属時に、米軍現金輸送車襲撃事件で手柄をたて公安担当になった。そして沖縄刑務所暴動で脱獄した人民党の島袋令秀に接近し、自分の作業員に育てることにした。人民党の瀬長亀次郎に心酔していく令秀に影響を受け、次第に瀬長を敬愛していく貞吉は、公安としての職務を全うできるのか? 米軍の横暴に立ちはだかった瀬長亀次郎と知られざる沖縄の姿を描く傑作小説!


戦後の沖縄では、沖縄の中でも「シマンチュ」(沖縄本島以外の諸島出身者)と「ウチナンチュ」(沖縄人/沖縄本島人)と区別されて、沖縄本島では、シマンチュは、他所者として扱われて、ときに差別的な待遇を受けていたんですね。琉球警察の警察官に採用された「東貞吉(ひがしさだよし)」は、シマンチュという事で、警察学校でも差別を受けるのですが、それをバネにして警察内でも功績を上げて公安担当になるんです。そして、貞吉は、人民党の動きを掴む為に、人民党の指導者である「瀬長亀次郎」に心酔している「島袋令秀」を作業員に仕立てる事に成功して、公安警察官としても実績を上げていくんです。しかし、瀬長亀次郎を知るにつれ、瀬長亀次郎こそが、今の沖縄に必要な人物なのではないか?と思う様になるんですね。下記は、高校生の島袋令秀が記者として、貞吉と共に、獄中にいる瀬長に合いに行った時の場面です。

「われわれは戦争に負けた。だからといって『負けたんだから仕方がない』と言っていたらだめだ。戦争をしたのは東京の政府であり、沖縄人ではない。われわれは勝手に巻き込まれ、故郷の地を戦場にされた。それがようやく終わったと思ったのも束の間、沖縄だけがすべてを奪われた。そんな理不尽なことなどあってたまるか。われわれは戦争に負けて親兄弟を殺された上、土地まで奪われたんだ。これでは戦争で死んでいった者たちも浮かばれない。おっと、高校生向けの話なのに熱くなってしまったな」
瀬長が人懐っこい笑みを浮かべる。
「お怒りはご尤もです。では、これからどうしていくつもりですか」
「まずは、土地の強制収用を認めないことから始める」
アイゼンハワー大統領は、日本政府に何の了解も取らずに「アメリカ合衆国は沖縄を軍事基地として無期限に保有する」と宣言した。しかも土地の使用料を一方的に「一括払い」とし、その後の支払いは発生しないという常識では考え難い措置も取られた。こうした措置は、主権国家に対して考えられないことだったが、当時の日本政府は反論一つしなかった。
瀬長の声音が熱を帯びる。
「今後も増えるはずの米軍による土地の買い上げや一括払いには、断固反対する。すでに基地化してしまった土地については、合理的な算定に基づく金額を認めさせ、一年ごとに使用料を支払わせる。米軍による家屋取り壊しなどの損害は、持ち主の要求する適正な金額を補償する。さらに不要となった土地は元の持ち主に返還し、新たな土地の収用は行わせない。これらの原則を米軍に認めさせることから始める」
人が変わったかのように熱弁を振るう瀬長に、二人は圧倒されていた。(二人とは、島袋令秀と東貞吉の事)


この時の貞吉は、琉球警察の公安と言っても、アメリカ合衆国の意向を汲んだ動きをするのが仕事でありまして、職務を全うすればするほど、人民党を追い詰める事となるんですね。瀬長の熱弁に圧倒された貞吉は、どうなっていくのでしょうか?という感じの物語です。

この作品は、オススメです。続きで、伊東潤のメルマガで、この作品に込められた思いを語っているので、それを紹介させて頂きます。(*´∇`*)


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デウスの城

伊東潤の「デウスの城」です。伊東潤メールマガジン「人間発電所日誌」で、こちらの作品が紹介されておりまして、魅力を感じて購入しました。下記がその内容の一部です。
11月16日、久しぶりの新作小説になる『デウスの城』が発売されます。
この作品は、関ヶ原の戦いから島原・天草の乱の原城攻防戦までを描いた長編小説です。戦国時代から江戸時代初期を生きた三人の男たち(架空の人物)にスポットを当て、「時代の荒波に翻弄されながらも、人はいかに生きるべきか」を問う作品になっています。

これまでキリシタンを主役にした歴史小説は多々書かれてきましたが、管見ながら、その多くは「キリシタン=いい人、幕府の役人=悪い人」という簡単な図式だったと思われます。
しかし本作では、幕府側や仏教側の立場や言い分も存分に書きました。
そこまでしないと、キリシタンたちがいかに絶望的な戦いに臨んだか分からないからです。

本作は574Pの大作となり、内容的にもキリシタン大叙事詩の領域にまで達しました。まさに「宗教とは何か」「神はいるのか」「ハライソ(天国)はあるのか」といった人間の根源に迫るテーマを私なりに掘り下げ、一つの回答を提示した作品となりました。
本作については、実業之日本社が運営するj-novelのロングインタビューで語り尽くしましたが、メルマガに登録している皆様にだけ、特別に補足したものも含めてお送りします。


プレゼンが上手いですね。僕の母方の実家が天草なので、もともと「島原・天草の乱」には興味があったのですが、そこから「宗教とは何か」「神はいるのか」「ハライソ(天国)はあるのか」といった人間の根源に迫るテーマまで掘り下げ、一つの回答を提示した作品とまで言われたら、読まざる得ないです。(*´∇`*)
 読み終えての感想としましては、満足のいくものでした。ストーリー展開も上手いとしか言い様がありませんし、3人の若者のそれぞれの人生にドラマ性があり、更に、きちんとした伊東潤なりの回答も示されておりました。
帯もいっときます。
神とは。
信仰とは。
生きるとは。

天下分け目の関ヶ原の戦いに西軍で参加した小西行長の小姓・彦九郎と善太夫、そして肥後の地で守りにつく佐平次。彼らは幼馴染の若きキリシタン侍だった。敗れて主家を失った三人はそれぞれ全く別の道を進むことに。やがて、激しい弾圧と苛政に苦しむ島原・天草の民が、奇跡を起こす四郎という名の少年の下に起ち上がった。この地で、三人は立場を変え、敵同士となり再会を果たすことにーー。
魂震わせる大河巨編!


という感じです。小西家に仕えていた、キリシタンの3人の若者が、関ヶ原の戦いの後、離れ離れとなり、それぞれの人生を歩んでいくんですね。彦九郎は「イルマン(宣教師)」となり、善太夫は「金地院崇伝の弟子」となり、佐平次は、キリシタン狩りの名人と言われるまでになり、島原・天草の乱で再会を果たします。3人の若者の、ここまでの道のりだけでも楽しめましたが、終盤に、3人の人生がぶつかり合う場面は、夜に読んでいたら涙したかもしれません。(*´∇`*)

難しさもなく、誰でも分かる様になっているので、オススメです。伊東潤の一つの回答(僕が勝手に思った)は、ネタばれになるかもなので、続きで紹介します。( ´∀`)つ


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浪華燃ゆ

伊東潤の「浪華燃ゆ」です。大塩平八郎の半生を描いた作品です。面白かったです。帯にもありますが、この大塩平八郎の乱から、江戸幕府の瓦解が始まったと言われてます。僕が学生の頃の日本史の授業で印象深かったのですが、先生曰く、幕府の役人だった者が反乱を起こしたという事が、当時「あり得ない」という点で、幕府や庶民に至るまで、かなりの衝撃的な事件だったとの事です。先生曰く、1860年の「桜田門外の変」に次いで、この乱が衝撃事件2位の事件と言ってました。(先生の予想では)では、内容紹介にいってみましょう。

わしは己に厳しくあらねばならぬ。

陽明学を究めた学者でもあり、大坂町奉行の敏腕与力でもあった大塩平八郎は、家族、門人たちをも巻き込んで、命を懸けた世直しに挑む。

立場にあぐらをかき、豪商と結託して私腹を肥やす上役ども。
立身出世に目がくらみ、悪事に立ち向かえない同僚、同輩。
世のため人のためにならぬ御託ばかりを並べる学者たち。

この男は、すべての不正を許さない!

江戸幕府の瓦解はここから始まった。
歴史時代小説の実力派・伊東潤が大塩平八郎の乱を描く!

大塩平八郎の生い立ちから、反乱を起こすまでの出来事が綴られておりまして面白かったです。1833年から始まった飢饉では、大量の餓死者が出た訳で、それに伴い、各地で百姓一揆や打ち壊しが起こりました。しかし、その惨状に心を痛めて、元役人が乱を起こしたという事が、当時の相関図としては有り得ない事だったんですね。では、大塩平八郎とはどんな人だったのだろう?と興味を持ったら、是非、この作品を読んで頂ければと思います。(*´∇`*)

続きで印象に残った場面を( ´∀`)つ


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もっこすの城

伊東潤の「もっこすの城〜熊本築城始末〜」です。歴史関連好きなのですが、城にはあまり興味がないので、そんな期待してなかったのですが、読み始めてみたら、しっかりエンターテイメント性もありまして、想定以上に面白かったです。この作品はオススメです。(*´∇`*)

天下無双の名城・熊本城はこうして築かれたーー。極上の築城ロマン!
天正10年、京都本能寺で織田信長が弑された。家臣の木村忠範は、自らが作り上げた安土城を守るため、城を枕に討ち死にを遂げる。残された嫡男の藤九郎は、一家を守るために猛将・加藤清正に仕官した。荒れ狂う菊池川の治水工事、死と隣り合わせの朝鮮出兵……。父の遺した秘伝書を武器に数々の困難をくぐり抜けてきた藤九郎は、ついに築城家としての檜舞台、熊本城築城に挑む。威風堂々、熱涙必至の長編戦国ロマン!

↓この作品に関するインタビューです。


この作品は、主人公も架空の人物で、架空の物語なのですが、実際に加藤清正は、熊本城を築き上げたわけです。そこに物語があるはずなんですね。そこまでの物語を伊東潤は魅力的に描いてました。城にそんな興味がない僕が読んでも凄く楽しめました。(因みにに「もっこす」とは、一度決めたら梃子でも動かない意思堅固な者の事をいいます)


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男たちの船出

伊東 潤の
「男たちの船出〜千石船佐渡海峡突破〜」です。文庫本が出たので購入してみましたが、これが面白かったです。瀬戸内で名匠と知られた船大工の父子が千石船造りに挑む物語なのですが、これがアツかったですね。下手な小細工なしに、泥臭くて現実感ある展開が逆に良かったです。読み終えた際には、心地よい読後感を味わえました。あらすじは、「伊東潤公式サイト」に出ているので、そこのを使わせて頂きます。

瀬戸内海の海運の要衝・塩飽諸島の牛島で廻船業者・丸尾五左衛門のもと、
随一の船大工と謳われていた嘉右衛門。
しかし、造った七百五十石積みの大船が大時化で沈没。
弟・市蔵や大勢の船子を失っていた。

寛文十二年(1673)五月、河村屋七兵衛(後の河村瑞賢)からの大船造りの依頼を嘉右衛門は断る。
が、弥八郎はそんな父を詰り、嘉右衛門は弥八郎を義絶する。

弥八郎は大坂へ船造りの修業に出る。
大坂で修業に苦労する弥八郎は、
七兵衛の意を受け大船造りのために佐渡島へ向かう。
そこではさらなる苦難が弥八郎を待っていた。

父と息子の愛憎と絆、職人の誇りと意地を懸けた対立を軸に、
心の奥底から湧き上がる強い感動が読者を揺さぶる傑作長編時代小説。

更に、公式サイトには「作者より」があります。この「作者より」も読み応えがありまして、こちらを読んでから、作品を読むとより深みが増しますわ。(*´∇`*)

日本は海に取り囲まれた島国です。

しかも内陸部は山あり谷ありで、
物を運ぶのに適していません。

そのため早いうちから
海運業が発達してきました。

ところが江戸時代前期までの
造船技術には限界があり、
本州を一周することさえたいへんでした。

というのも本州沿岸には三カ所の難所があり、
そこを通過するのが困難だったからです。

その三カ所とは津軽海峡、
熊野灘から遠州灘にかけて、
そして佐渡海峡です。

江戸―大坂間を行き来する船が
多いこともあり、
遭難件数は熊野灘から遠州灘にかけてが
断トツなのですが、
海の荒れ方のひどさは
佐渡海峡が一番でした。

というのも地球の自転の影響で、
潮流は西から東に向かって流れていきます。
ところが日本海には、
佐渡島という巨大な岩塊が立ちはだかり、
そこで潮流は二分されていきます。

さらに佐渡近海の海底の隆起は激しく、
潮流は極めて複雑な動きをします。

江戸時代初期、
佐渡海峡を通れるのは一年のうち四〜六カ月ほどで、
残る半年ほどの交通は途絶していました。

それほど当時の造船技術では
海に勝てなかったのです。

しかし、どうしても
海に挑まねばならない事情が発生します。

十七世紀に入ると、
旱魃(かんばつ)や不作によって
飢饉(ききん)が起こり、
江戸への人口流入が始まります。

これは爆発的で、
瞬く間に江戸は
世界一の人口を抱える大都市へと
変わっていきました。

これにより江戸を飢えさせないために、
東北の天領で収穫された米や穀物を
江戸に運び込まねばならなくなったのです。

しかし当時の陸運力には限界があり、
海運に頼らざるを得ません。

とはいっても、
それまでの小型船では積載量も限られている上、
船の数が多くなれば事故による損米率も上がります。

そこで、冬の佐渡海峡でも難なく通過できる
大船を開発しようということになったのです。

ところが千石船を造るとしても、
五百石積み船を、
そのまま大きくすればよいわけではありません。

帆を巨大化すれば取り回しが困難になり、
船尾の舵を大きくすれば、
水深が浅い海には入れません。

さらに大きくなればなるだけ
船腹に横波を受ける面積も大きくなり、
横転しやすくなります。

こうした致命的ともいえる和船の弱みを、
試行錯誤を重ねながら克服していかねば
ならなくなったのです。

主人公の嘉右衛門は老境が近づいた船大工頭で、
弟の海難死によって大船造りに否定的になります。

しかしイノベーションしていかないと、
塩飽の造船業は衰退を余儀なくされるのも事実です。

そこで大船を造ろうという息子の弥八郎と、
それに消極的な嘉右衛門との間で確執が始まります。

そこに一人の男が現れることで、事態は動き出します。

その男とは河村瑞賢です。

瑞賢は塩飽の造船技術を高く買っており、
塩飽で千石船を造らせようとしますが、
事はそう容易には運びません。

人という生き物は、変化を受け入れ難いものです。
とくに年を取るほどに、それまで成功体験に固執し、
新たなことに挑戦することに消極的になります。

しかし環境の変化は待ってくれません。
「そこにとどまっていること」は
衰退や没落を意味するのです。

『男たちの船出』は、
イノベーションの生みだす様々なジレンマを、
塩飽の船大工たちの視点で描いた人間ドラマです。

言うまでもなく、
和船の構造的な問題をいかに克服していくかという
技術的なテーマばかりではなく、
父子の確執、老いの問題、
代替わりの難しさといった数々の
「人間本来の問題」も取り上げていますので、
誰にでも楽しめる作品となっています。

ここまで詳しく書いて頂けると、もう説明は要らないですね。最初に、
「瀬戸内で名匠と知られた船大工の父子が千石船造りに挑む物語」と書きましたが、その千石船造りに挑む物語が、現代に未だにある「父子の確執」「老いの問題」「代替わりの難しさ」ともリンクしておりまして、ほんと楽しめます。この作品はオススメです。

続きで、印象に残った場面を。( ´∀`)つ


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西郷の首

伊東潤の「西郷の首」です。文庫本が出たので購入して読んでみたのですが、なかなか面白かったです。タイトルからすると「西郷隆盛」が主人公の話かと勘違いしてしまうのですが、そうではなくて、旧加賀藩士の若者2人が主人公の物語です。幕末の争乱では置いてかれてしまった感のある加賀藩の幕末〜明治の様子が描かれておりまして興味深く読む事が出来ます。そして何よりも、主人公の若者は、島田一郎千田登文なんですね。島田一郎は、あの大久保利通を暗殺した人物で、千田登文は、あの西南戦争の折、西郷の首を発見した人物です。二人は幼い頃からの親友同士なんですね。加賀藩の足軽の家に生まれた二人がお互い助け合いながら成長していく過程が描かれておりまして、上記の出来事の核心部分に迫った描写は感動モノでした。伊東潤がこの作品に付いて書いておりますので、コピペしておきます。

江戸時代末期は欧米諸国の船が次々と来航し、日本に開国要求を突き付けてくるという外圧の時代でした。日本の植民地化を虎視眈々と狙う諸外国に対し、江戸幕府は対応しきれず、言われるままに条約を締結していきます。
こうした中、「これではいけない」という志を持つ若者たちが次々と現れ、志士活動に邁進します。そして、その大半が死んでいきました。
それでも彼らの生き残りによって、明治政府は樹立されました。ところが、その恩恵に浴し、明治政府の顕官の座を独占したのは、薩摩・長州・土佐・肥前といった維新の原動力となった藩出身の志士たちで、この四藩による藩閥が明治政府を形作っていきます。
おそらく多くの方が、この四藩出身の英雄たちの物語をご存じでしょう。とくに2018年の大河ドラマは、林真理子さん原作の『西郷どん』ということもあり、西郷隆盛や大久保利通の薩摩藩に注目が集まっています。
しかし幕末から維新を懸命に生き抜いたのは、薩長土肥出身者ばかりではありません。彼らの陰で埋もれていった人々がいます。
比較的早くから朝廷側、すなわち薩長側に付き、戊辰戦争で多くの血を流した旧加賀藩士たちも、維新の恩恵を受けられなかった一団でした。彼らがどれだけ優秀なのかは、磯田道史氏の『武士の家計簿』を読めば明らかだと思いますが、百万石の大藩だけあって人材も豊富でした。しかし、一人として大臣やそれに次ぐ地位に就いた者はいません。
本書は二人の旧加賀藩士の視点で物語が進みます。一人は時代の流れに順応し、軍人となります。もう一人は時代の流れに抗うかのように政治結社を結成し、反政府活動に身を投じます。いわゆる不平士族です。
彼らは彼らなりに、日本をよくしようと幕末から維新を懸命に生き抜きました。
一方は不器用ながらも周囲の引き立てによって、軍人としての輝かしいキャリアを歩みます。もう一方は才があるゆえに現状に満足できず、それが明治政府に対する憎悪に結び付き、大久保利通を暗殺するという暴挙に出ます。

本書『西郷の首』によって私の「西郷隆盛と明治維新三部作」は完結しました。
『武士の碑』では西郷側近の村田新八の視点から、『走狗』では西郷に大恩がありながら袂を分かち大久保側に付いた川路利良の視点から、そして『西郷の首』では不遇をかこつ加賀藩士の視点から、それぞれの幕末維新と西郷隆盛を描きました。
明治維新から百五十年を迎える2018年、この三作品を世に問うことは、今を生きる作家として、この上ない喜びです。
「明治維新とは何だったのか」「西郷隆盛とは何者だったのか」という私なりの答をお読みいただき、皆さんにも一緒に考えていただきたいと思っています。


幕末の時代に興味を持ち始めたばかりの方は、この作品は一旦スルーして頂きまして、一通りのメインどころを読み終えた方にオススメです。( ´∀`)つ

続きで印象に残った場面を(*´∇`*)


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茶聖

伊東潤の「茶聖」です。茶道千家流の始祖で「茶聖」と呼ばれた「千利休」を主人公にした物語です。僕的には「秀吉」が死んだ後の時代から明治維新くらいまでが特に好きなので、この作品が発売された時には興味が沸かなかったのですが、楽天ポイントが貯まったので、何となく購入してみた感じでした。そして、読み始めてみますと(伊東潤は大河を狙って書いたと言うだけありまして)凄く分かり易いですし、要所要所にしっかりとドラマがありまして519ページもあるのですが、全く飽きる事なく楽しめしました。

戦場はたった
二畳の茶室

「茶の湯」が、能、連歌、書画、奏楽といった競合する文化を圧倒し、戦国動乱期の武将たちを魅了した理由はどこにあったのか。 利休は何を目指し、何を企んでいたのか。秀吉とはいかなる関係で、いかなる確執が生まれていったのか。
限られた空間で繰り広げられる、天下をも左右する緊迫の心理戦。信長、秀吉、家康・・・・・死と隣り合わせで生き残る武将たちとの熱き人間ドラマ。

帯はこんな感じです。大河を狙っているだけありまして、この作品での「千利休」は、戦乱の世を終わらせ、ただただ静謐を求めるが為に、時の権力者に付いて世の中を操るという「アツい男」という設定で進みます。この設定も僕好みで、利休の政治力や功績などを考えると概ねこんな人物だったのだろうと思っていたのでストレスもなかったです。そして、利休が切腹となった直接の原因は諸説ありますが、根本的な所はどれも同じで「邪魔」になったからなんですね。そこに辿り着くまでの伊東潤の解釈が洗練されておりまして良かったですね。

この作品はオススメです。この作品絡みで特別対談の記事がありました。対談相手が悪かった気もしまして、あまり面白くなかったです。



続きで印象に残った場面を( ´∀`)つ


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4
囚われの山

伊東潤の「囚われの山」です。この作品は、1902年に起きた八甲田雪中行軍遭難事件を題材としたミステリー小説です。上記にウィキのリンクを貼っておきました。
日本陸軍第8師団の歩兵第5連隊が青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう雪中行軍の途中で遭難した事件。訓練への参加者210名中199名が死亡(うち6名は救出後死亡)するという日本の冬季軍事訓練において最も多くの死傷者を出した事故であるとともに、近代の登山史における世界最大級の山岳遭難事故である。

1902年の1月に雪中訓練に参加した210名中199名が死亡するという大惨事が起きた訳ですが、120年の時を経て、この事件の謎に歴史雑誌編集者の「菅原誠一」が迫るという物語です。これが良く出来た作品で、凄く面白かったです。この事件を題材に、新田次郎が描いた「八甲田山死の彷徨」という作品がありますが、それが映画化されて、テレビでもやっていたので、知っている人も沢山いると思いますが、知らない方は、先ず、ウィキに出ている位の基礎知識を持って読んだ方がより面白く感じると思います。それでは帯にいってみましょう。

日露戦争直前の明治三十五(一九〇二)年一月二十三日。青森の屯営から厳寒の八甲田へと向かった陸軍第八師団第五連隊の二百十名は、吹雪の中へと消えた。百九十九名の兵士が死亡した世界登山史上最大級の遭難として有名な八甲田雪中行軍遭難事件である。歴史雑誌の編集者である菅原誠一は、特集企画のために遭難事件を調べるうちに、ひとつの疑問が浮かんだ。遭難死した兵士の人数が合わない・・・・・。取り憑かれたように青森で取材を続ける菅原は、ついに「稲田庸三一等卒」という兵士の存在を発見する。彼が、歴史の闇に消された兵士なのか。そして稲田の存在は、雪中行軍訓練に隠された別の目的へと結びついていく・・・・・。菅原が最後に辿り着いた真実とは?驚愕のラストまで目が離せない、傑作長編ミステリー‼

という感じです。この帯は素晴らしいですね。事件をなぞっていきながら、この「稲田庸三一等卒」を登場させて、深みある作品に仕上げておりました。この事件は、生存者が11名いますし、事実関係がほぼ明らかになっている事件なので、ミステリー小説に仕立て上げるには、「謎」をどんなものにするか?とか、事件の背景を知っている読者をどんな風な展開で惹き込んでいくのか?とか、凄く難しいかと思うのですが、これが完璧な仕上がりでした。最初からラストまで全く飽きる事なく楽しめました。この作品はオススメです。( ´∀`)つ


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3
天地雷動













伊東潤の「天地雷動」です。信玄の死から「長篠の合戦」までを描いた作品で、まあまあ面白かったです。長篠の合戦に至るまでが、勝頼の視点、秀吉の視点、家康の視点で交互に描かれていまして非常に楽しめるのですが、肝心のクライマックスとも言える「長篠の合戦」の描写が下手で、僕の中でイマイチ盛り上がらなかったですね。最後の戦いこそが、これまでの流れの集大成となるはずなのに、あっさり過ぎで残念でした。

勝頼の場面では、長坂光堅の陰謀的(家中での主導権争い)な流れで「長篠の合戦」を向かいます。秀吉の場面では、鉄砲と弾薬をいかに集める事が出来るかが勝敗の鍵との事で、3,000張の鉄砲を集める為に奮闘します。家康の場面では、信玄の死からこの合戦までの家康の心理描写が上手に描かれています。そして迎えた「長篠の合戦」では否が応でも期待値が上がるのですが・・・・・・・・。大した事はなかったです。


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