暗殺者奪還上下

マーク・グリーニーの
「暗殺者の奪還(上下)」です。「グレイマン」シリーズの第14作目となります。安定の面白さで、この上下巻を読んでいる間の通勤時間は、あっという間に過ぎました。

今回の作品は、内容自体はとてもシンプルです。前作でキューバで捕らわれたゾーヤはロシアへ引き渡され、矯正収容所に監禁されてしまいます。そこへ、ジェントリーが救出に向かう――という物語です。展開は単純ながら、とにかくアツかったです。最初からラストまで中弛みすることなく、一気に読ませる面白さでした。

一応、帯を紹介します。先ずは上巻の帯です。
暗殺者グレイマンことジェントリーは、ロシア国内にとらわれている恋人で元SVR(ロシア対外情報庁)将校のゾーヤを助け出すべく、東欧各地で死闘を繰り広げていた。ゾーヤの監禁先が旧ソ連時代にヤヴァースに建てられた矯正収容所IK-2であることを知った彼は、反ロシア政府派の人物の協力を得てロシア入国のための行動を開始する。だが、道中でGRUの襲撃を受け……。グレイマンの決死の救出劇が幕を開ける!

次に下巻の帯です。
ゾーヤがIK-2ヤヴァースに収監された理由は不明だが、その裏にはある大きな陰謀が存在していた! ゾーヤが矯正収容所からの脱出を試みる一方、ジェントリーは、収容所襲撃という目的が一致した反政府組織の自由ロシア軍団と、CIAによって非公式に協力要請された新ロシア会議の手を借りて、彼女を助け出すための作戦を開始する。ロシア・ウクライナ戦争を背景にグレイマンのアクションが冴えるシリーズ最高到達点

ゾーヤはすでにロシアで処刑されてしまっているのではないか――。そう思いながらも、ジェントリーは彼女を救出すべく、ロシアへの潜入を試みます。しかし、これがそう簡単な話ではありません(当たり前ですが)上巻では、ジェントリーがロシアへ入国するための潜入ルートを確保するまでの過程が描かれます。上下巻を通して読んでみると、この上巻のほうが、よりアツかったかもしれません。

そして下巻では、ロシア潜入に成功したジェントリーが、国内の反乱組織と手を組み、ゾーヤ、そしてロシア反体制運動の象徴的存在となる人物を奪還するまでが描かれます。物語にはウクライナや、ロシア大統領打倒を目論む組織、さらにはCIAまでもが絡み、事態は大掛かりな軍事作戦へと発展していきます。

グレイマンシリーズをまだ読んでない方は、シリーズの1作目から読んでみてください。ハマると思います。続きで印象に残った場面を。(*´∇`*)

人気ブログランキングでフォロー

読書日記ランキング
読書日記ランキング









ロシアに潜入したジェントリーと反体制派に力を貸している人物(ルベノフ)との会話です。
「そのとおり」ルベノフがすこし近づいて、さらに声を落とした。
「モスクワにいるあいだ泊まる場所をあんたが必要としていると、ミルダがいった。もちろん、あんたの身許を保証し、あんたが属しているのが、わたしがかつて尽くしていた組織だということもいったよ」肩をすくめた。「曲がりなりにも」
「それに、彼女はこういっている」ジェントリーはいった。「ここから二十分のところにあるクレムリンで起きていることを、あんたが不愉快に思っていると」ルベノフが、馬鹿にするようにいった。
「クレムリンで起きていることだけじゃない。街で起きていること、国民に起きていることもだ。ペスコフはロボットみたいな人間しか容認しない。完全な忠誠を要求する。だれもが結構なプロパガンダをオウムのようにいわなければならない。仕事に行き、経済制裁下で苦しみ、戦争で子供や孫を亡くし、ウクライナのドローンの夜間空襲や警察国家の強硬な戦術をくぐり抜けなければならない」
ふつうのロシア人にとってひどいそういう状況が、さらに悪化しつつある。わたしは年寄りだが、それでも、将来、この国になにが起きるのか心配している」
「だったら、おれに手を貸してくれ」
ルベノフがうなずいた。「あんたがここにやりにきたこと。それがわたしの国に役立つのか?」

作中では、現在のロシア国内の状況も描かれています。ロシアの善良な市民たちは、もちろんウクライナとの戦争に嫌気がさしているのですが、独裁国家であるロシアでは、その不満を口にすることすら許されません。この場面を読んで、物語とは直接関係ない部分ではありますが、改めて「独裁国家は存在してはいけない」と強く感じました。

同じく、ジェントリーとルベノフの会話です。
国家政治保安部に移管されたあと、最終的に国家保安委員会になった。
いまは国内の治安はほとんど連邦保安庁の管轄だが、多くのひとびと、とくに高齢者は、国家保安委員会をいまだにチェキストと呼ぶ。
ジェントリーはいった。
「いつの日か、考えていることをいえる自由が得られるかもしれない」
ルベノフが、小さなサモワールから自分の紅茶を注ぎ、ゆっくりひと口飲んだ。
「ロシアにはこんなジョークがある。われわれには言論の自由がある。ただ、言論後の自由がない」

「ロシアにはこんなジョークがある。われわれには言論の自由がある。ただ、言論後の自由がない」このジョークも、物語とは関係なく印象に残りましたね。