隅田川心中

赤松利市の「隅田川心中」です。本格的にアップはしてきませんでしたが、食べ歩き記事の前半部分で、赤松作品を何冊が案内してきました。「ボダ子」を最初に読んで、次に「鯖」を読んで、赤松利市作品を制覇してみようと思ったんですね。今回の作品は、タイトル通リ、隅田川に入水心中する男女の物語なのですが、そこに至るまでの展開が(ラストは分かっているのに)楽しめました。内容紹介です。

64歳の大隅一郎は気ままなひとり暮らし。ある日、行きつけの喫茶店でアルバイトをしている咲子に「父親の借金返済のために愛人にしてください」と言われて承諾する。32歳の咲子と同衾を果たした末に、「子供を産みたい」と懇願され数十年ぶりに恋の炎が燃えたぎる。咲子の体に溺れた一郎は結婚を決意するのだが、彼女の父親の借金問題に悪い輩が絡んで一郎の貯蓄はみるみるうちに溶け、一気に奈落の底へと堕ちていく。愚かな男の性を大藪春彦賞作家が生々しく、はかなく描いた傑作性愛小説。


この内容紹介も良いですね。ほんと、64歳の愚かな男の性が、生々しく、はかなく描かれてます。ほんと「はかない」です。そして想像はつくと思うのですが、この愚かな男性は、赤松利市自身がモデルなんですね。以下は「あとがき」からです。

さて、登場人物につきまして、私の作品のほとんどがそうであるように、実在する人物をモデルにしております。主人公の愛欲に溺れる情けない初老の男性のモデルは私自身です。
彼が落剝していくエピソードも、私が作家になる以前の実体験を元にしたものです。
登場人物が訪れる飲食店も浅草に実在します。
しかし、私にも(ご信頼頂けないかもしれませんが)、自分なりに超えてはいけないと考える一線がございます。
私なりにコンプライアンスを意識しているのです。
私以外のモデルには、登場人物であろうが、取り上げた飲食店であろうが、モデルにすることを逐一お断りし、許諾を得ております。
実名を明かさないで欲しいと言われた飲食店さんが一店舗だけありますので、その他の店は、「浅草 店舗名」でご検索頂ければ、所在地を含めた詳細が明らかになるはずです。


この「あとがき」の知識を持って読むと、更に楽しめると思います。あと1年で定年を迎える「大隅一郎」は、64歳まで独身できたのですが、32歳の幸薄の咲子と出会い、幸せな生活を夢みて結婚を決意するですね。しかし、咲子には、咲子に寄生するギャンブル狂(競馬)の父親がいて、その父親と縁を切る為に、借金の肩代わりをするのですが、咲子の父親はまたノミ屋に借金を作ってしまうんです。老後の為に貯めてあった500万も底をつきそうになり・・・・。一郎は、奈落の底に落ちていくんですね。そこに至るまでの物語がホント面白かったです。(ほんと愚かで駄目人間なんです。笑ってしまう程に)この作品を通勤電車で読んでいたのですが、咲子の風俗嬢なみのテクニックに、思わず勃起してしまいました。(*´∇`*)

続きで印象に残った場面を。

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ストーリー展開に全く関係ない場面ですみません。咲子とやると決まって、新橋のクリニックに「ED薬」を処方してもらいに行くんです。(たしか、今は亡き上司も新橋のクリニックに「レビトラ」を処方してもらっていると言ってました)
一郎/64歳の下記の場面は、僕の上司が同じ事を話してました。そういう薬を全く必要としない今の僕にも、やがて必要とする日がくるかもしれないと思うと、何か分からない複雑な感情が沸いていきました。

ドアが開くと目の前が医院です。
それはクリニックという表示があるからそうだと分かるもので、なければ普通の会議室だと思ってしまうような医院です。
室内も同じで、簡素なカウンターの向こうに若い男性が座っております。
「処方ですか?」
問われたので一郎が肯きますと、紙を挟んだクリップボードとボールペンが差し出されます。「問診票」と記された紙です。
既往症、服用している薬、アレルギーの有無などの質問事項が並ぶ、ごく普通の問診票です。普通と違いますのは、「お名前は匿名でも構いません」と、受付の青年から言われた事です。
「何回分必要ですか?」
医師に訊かれます。その言葉の意味に一郎はハッと致します。
通常であれば、「二週間分のお薬を出しておきますね」などというのであろう場面で、医師は「何回分必要ですか」と訊いてきているのです。それは即ち、「何回セックスしますか?」という問い掛けと同義ではございませんか。
それに気付いて一郎は皮算用を始めます。
咲子に融通した金は三十万円、一回五万円として、いやいやそれは高過ぎるだろう、一回二万円として、いやいやそれは、いくらんでも安くはないか、そのようなことをあれこれ思案し、とりあえずは三万円に落ち着きます。一郎が納得出来る咲子とのセックス単価がそれでした。
「十回分をお願いします」
肯いて医師が袖机からクリアファイルを取り出します。一枚のパンフレットを抜き出して、一郎に差出します。
「当医院で処方出来る薬の種類です。ご希望を仰ってください」
バイアグラ、レビトラ、シアリスと並んでおります。曲がりなりにも一郎の知識としてあるのはバイアグラです。
パンフレットを見ながらED薬を吟味します。
先ずは特徴。
バイアグラは使用実績を謳っております。レビトラは即効性を、シアリスは効果時間が長い薬のようです。次に服用時間。
バイアグラは性行為の一時間前、レビトラは三十分から一時間前、そしてシアリスは一時間から三時間前、やや幅はございますが、いずれも一時間前に服用すれば問題がないようです。
そして効果の持続時間。
バイアグラは五時間程度、レビトラは五時間から八時間、そしてシアリスは三十時間から三十六時間程度。


勉強になりました。(*´∇`*)